ホテルローヤル ポップに仕上げられたラブホテルストーリー

 ホテルローヤルを観た。

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北国の湿原を望むラブホテル「ホテルローヤル」経営者の一人娘・田中雅代(波瑠)は受験に失敗し、渋々実家の仕事を手伝うことになる。 アダルトグッズ会社の営業・宮川聡史(松山ケンイチ)に思いを寄せながら、告白することなく淡々と仕事をこなす間にも、ホテルにはさまざまな境遇の男女が訪れる。

 

 変わった題材のあらすじに惹かれて観た。 公開されて二週間足らずの祝日のシネコンには柄の悪そうなカップルと私たち以外には、ほぼ一人で観にきている人しかいなかった。たしかにラブホテルがあらすじに入っている映画を誰かと見るのはけっこう気が進まない。

  ラブホテルの特殊さ、アンダーグラウンドな世界がもっと掘り下げられたエグい作品なのだと思っていた。たしかにスクリーンにアダルトグッズや女性の裸体が全面に映される画はなかなか稀有だけど、それもマイルドな表現にとどまっている。ラブホテルで起きるカップルたちの物語はごく平凡で、エンターテイメントで包める安全な範囲。現実世界から大きく逸脱することはない。加えてちょくちょく差し入れられる劇伴のありきたりさが題材のなまぬるい描写を強調してもいた。もっとガシガシラブホテルの異常さを描いてほしい、と思ったけれど、それは原作ありきだからしょうがないのか。ヒューマンストーリー仕立てのポップな路線にもアングラよりにもなりきれていない感があった。

 盗み聞きをする趣味は私にはないけれど、ホテルの管理人を勤める主人公の「傍観者から当事者になりたい」という願いは、わりと共感できるものがあった。